ハワイ大学医学部における解剖実習と
病院での指圧奉仕
 
2011年4月14日
 
     日本指圧専門学校が春休みを利用して毎年、指圧学校の生徒さんのための解剖実習を、ハワイのホノルルにあるハワイ大学の医学部で開催します。今回で10回目を迎えました。日本専門学校から約60人の生徒、そして浪越和民理事長、石塚寛校長、小林秋朝先生、以下数名の実技の先生が参加しました。またカナダからカナダ指圧学校の校長・池永清先生、スペインから日西SHIATSU学院院長・小野田茂、スタッフの鈴木、小野田一生が参加させていただきました。また地元ハワイからAISEN指圧schoolの生徒及びOBがお手伝いを兼ねて参加しました。 
東日本大震災があり何人かの参加者が辞退されましたが、またとない機会でしたので、被災者の人たちに冥福をささげながら断腸の思いでハワイにおける全日程を研修させていただき、滞在中、たくさんの地元の人たちからお見舞いと励ましのお言葉をいただきました。
 
   


ハワイの海岸

 
    話はそれますが、私の学校があるスペインの首都・マドリッドにおいても、生徒や学校のOB、患者さん、ありとあらゆる方々からメールや電話でお悔やみの言葉や励ましのお言葉をいただきました。日本人のこれまでにおける行ないが、また報道される被災者の秩序正しい行ないがすばらしいと、大和民族の優秀性が改めて評価されました。海外にいる日本人にとってももちろん悲しく、これから日本はどうなるのだろうと現実に考えさせられる出来事ではありますが、日本人である誇りを改めて認識させられたことも事実であります。
解剖実習の前日、ハワイのKUAKINI MEDICAL CENTERの病院でお医者さんや看護婦さん、また入院している患者さんを対象にしたボランティアの座位指圧が、病院内の講堂で行われました。10回目という事で、指圧を楽しみにしていた人が多かったようで、約80人のボランティアの指圧師が休む暇なく施術をして、あっという間に300人の人たちに座位指圧を堪能してもらいました。特にたくさんのお医者さんが気さくに訪れ、気持ち良さそうに指圧を受けていたことに、我々が大いに満足した事は言うまでもありません。
誠にもってアメリカの医療関係の人たちはフレンドリーで、且つユーモア、ウィットを兼ねそろえ、その日本の医者とは違ったイメージに日本から来た生徒さんは驚いていました。確かにヨーロッパとも違った何かを持っている雰囲気の人たちという感じを与えていました。
 
   
日本指圧専門学校の和民理事長、石塚校長、小林先生、現地ハワイの因泥先生と奥様、カナダの池永先生、スペインの小野田先生が会合

 
    この10回目のハワイ研修を迎えるにあたり、ハワイ在住のAISEN指圧学校校長・因泥文彦先生及びイレネ夫人のオーガナイザーとしての多大なる努力があったことに、参加者一同が改めて最大のご祝辞とねぎらいの言葉を捧げた事は言うまでもありません。
解剖実習は、5体の献体に深く感謝すること、すなわち黙祷から始まりました。比較的、献体も新しく、ぱさぱさしたものではなかったので、筋肉の感触や重量感が直接私たちの掌に感じられました。10人前後の医学部のドクターとスタッフが、懇切丁寧に私たちを未知の世界に誘導してくれたので、2日間誠に充実した解剖実習でした。
5つのグループに分かれてメスを持たせていただき実習を行いましたが、私は昨年同様スポーツ医学専門のドクターにつき勉強させていただきました。
毎回思うことは、精密機械よりまだ精密な人体の構造、そしてその美しさは、正に人間の体はひとつの芸術だという一言に尽きるという事です。
今回も短い時間の有効性を考え、テーマを絞り勉強させていただきました。指圧の基本、腰痛をテーマに絞り、特に梨状筋、大腰筋の位置と大きさ、そして椎骨のずれはアジャストが可能かという事を、実際に解剖実習を兼ねて確認しました。
梨状筋は、皆様もご存知のように腰痛や坐骨神経痛における治療で最重要な筋の一つです。
ドクターによると梨状筋の下を坐骨神経が走行するのが普通ですが、人によっては、その筋肉の上を走行したり、また筋肉を貫いたりで、全く解剖の本どおりの構造ではないという事でした。
また、もしその梨状筋の緊張を解く目的の治療であれば、ごく軽い接触程度の持続圧で2〜3分間指腹を接触し続けるだけで十分で、筋への強圧は逆に症状を悪化させる場合があるということでした。このことは、私のセンターの治療方針と一致しましたので大満足でした。
大腰筋もまた、腰痛症やお年寄りの転倒防止のために強化されるべき筋肉の一つですが、患者の治療時における色々な姿勢で大腰筋のパルペーションを試み、果たして直接触れる事が可能かということが解剖実習を通して知りたかったことでした。2〜3のドクターに質問したところ、直接触る事は無理という答えが返ってきました。それでは間接的に触れる場所はと質問したところ、患者さんの体につく脂肪量の大小、位置にもよりますが、2箇所ほどあるということでした。
 
 
参加者全員で座位指圧のボランティア KUAKINI MEDICAL CENTERの病院にて


    この辺を、今年の治療課題にして患者と向き合う方針を固めました。 
実際、この解剖実習で得たものはたくさんあり24時間かけてハワイに行った価値は計り知れないものがありました。一週間ハワイに滞在していつもの如くワイキキの浜辺はほんの3時間でしたが、それはそれで実りのある旅になりました。実際指圧のセミナーなどで世界中を回っていますが、飛行場、ホテル、セミナー会場、レストランの4箇所を、動き回るだけの行動が大部分です。お土産を買うときだけ、嗚呼この地にいるのだと実感させられるくらいです。
最後に椎骨のずれのアジャストについてのドクターの見解を述べてみましょう。
こうも人間の体の仕組みの完璧さを目のあたりにしますと、ボキボキと音を放った後、「はい、骨のずれが元に戻りました」ということ自体に疑問を感じるのは、普通の治療師なら当たり前の事です。
筋膜の頑丈さ、腱、靭帯の鋼を思わせる形相、これはひとつの芸術品です。生活習慣による各個人の癖による長年の姿勢は、骨盤を中心とした左右対称の体の各関節にずれを生じさせるだろうことは想像できます。そのことにより左右にある同じ筋肉も自ずと、発達が違ってきます。右利きの人の各筋肉の使い方が左の同筋肉の太さや強弱をも変えるはずです。左利きも叱りです。
 
   
因泥先生が車椅子のご婦人に指圧
病院のドクター、BIG DRが指圧を受けています

解剖ドクターのヘッド(右)とそのご家族に因泥先生(上左)が指圧

小林先生が首の治療のお手本を
 
   
それでは、一度ブロックされた関節を動かす事が可能でしょうか。車の事故などの衝撃で、体は、骨は、関節は、簡単に、常識では考えられない形に変形します。このことを考慮すればエキスパートのカイロプラクターなら関節のずれを矯正するのは可能なはずです。しかしこの技は、匠の師だけが出来うるもののはずです。1〜2年で出来るものではありませんし、また十分なレントゲンやスキャナでの診断が必要になります。これは、西洋医学をマスターしたカイロドクターの仕事で、民間の何々師の仕事ではありません。
結論として、ドクターが私たちにコメントした事は、ボキボキ音は関節腔内に溜まったガスが破裂した音であり、ずれた部分の動きの遊びを回復する事は可能であるが、「ボキ、はい、ずれが治りました。」は疑問ですという見解でした。これはあくまで何百体と解剖をしてきたスポーツドクターのオピニオンです。この答えのイエス・ノーは、各個人の考えにお任せいたします。
 
   


小野田先生と池永先生がJSCの石塚校長に指圧


ハワイ大学医学部の正面玄関
 
   



私自身ここ5〜6年盛んに、指圧における硬結ポイント、特に関節部位の遊びを取る、遊びをつける、などといった、この部分の可動性に注目して治療してきました。筋の伸展、解放、可動性と、痛みの関係etc。これも1年間の私の宿題という事で、来年までユックリ患者さんと向き合い解決していきたいと思いました。
このように指圧の実践治療の勉強をさせていただき、改めてハワイの因泥先生のオーガナイザーとしての正に縁の下の働き、そして日本指圧専門学校浪越和民理事長、校長石塚寛博士の寛大なる外国での指圧普及に従事する卒業生へのご配慮に感謝いたします。
また大震災後、日本人が一丸となり復興に全力を注ぐこの時期に、私たち異国に住む日本人も日本のカルチャーの普及を通して、微力ながらも大和の国の復興に貢献したいと思います。

マドリッド   日西指圧学院  院長 小野田茂

気さくな解剖ドクターたちとの記念写真